11.06.2009

第47回


日時:11月6日(金)17:00〜
場所:国立オリンピック記念青少年総合センター, センター棟小研修室
発表者:逆井聡人
タイトル:石川淳「焼跡のイエス」論—闇市の政治的位相と〈少年〉

報告要旨:

本報告は、石川淳の「焼跡のイエス」(『新潮』、昭和二十一年十月号)における〈少年=イエス/クリスト〉とはどのような存在かという解釈上の問題を中心に作品を分析する。「焼跡のイエス」は戦後石川文学における代表作品の一つであり、多くの批評家研究者がこの作品について言及してきた。しかし、先行する研究は〈少年〉の解釈に関して様々な見解を提示しているものの、物語の舞台となる「闇市」に関して「極めて戦後的で混沌とした空間」という一様の把握に留まっており、その政治的・歴史的位相を詳細に検討した上で〈少年〉を捉えるという分析が十分になされていない。

本分析では「闇市」が本当に「戦後的」であり「混沌」とした空間であったか、という検討を出発点としてテクストを読んでいく。また同時代の世相を扱った他の作家による作品と比較し、最終的に敗戦直後の石川淳の諸作品との関係性の中で〈少年〉の意味と「焼跡のイエス」という作品自体の歴史的位置を検討していく。

なお、この報告は報告者が現在執筆中の修士論文を基にしている。