4.06.2012

第63回


日時:4月6日(金)
【個人発表】
村上陽子「日の丸と黒人兵 長堂英吉「黒人街」論」
【書評会】
佐藤泉『戦後批評のメタヒストリー 近代を記憶する場』(岩波書店、2005年)
書評者:村上克尚、司会:田口麻奈
【企画趣旨】 (コーディネーター:田口麻奈)

 昨春の原発事故は、戦後日本の経済発展を支えてきた対米政策の負の部分を強烈に
露呈させ、その体制の行き詰まりが誰の目にも明らかな事態となりました。
 歴史化された〈戦後〉の記憶と、そこにあった諸問題が、実際には終るべくもない審議事項として存在し続けていたことを痛感する現在であるといえます。
 著者の佐藤泉氏は、現在この問題に正面から向き合い最も精力的な活動を展開され
ている日本文学研究者の一人であり、戦後日本の行方を占った1950年代の再検討を、文学を媒介として先駆的に進めて来られた方でもあります。
 2005年つまり戦後60年という節目に刊行された本著を今取り上げさせて頂くのは、政治的・社会的諸制度が今日の様相で固定化される前、重要な分岐点を抱えて多くの思想と運動が交錯した1945~1950年代への視角が、そのまま現在を批判的に問い直す視角に接続されるからにほかなりません。
 今回のコメンテーターの村上克尚氏もまた、戦後文学の思想的可能性を現代に送り返そうとする思考を重ねてきた文学研究者であり、専門領域を同じくするお二人の議論を土台にして、開示された新たな問題点を、参加者の皆さまと共有できればと思います。
 
 ご専門に関わらず、ご関心をお持ちの皆さまはどうぞお誘い合わせの上ふるってご参加ください。
 いつもより大きい会場を用意して、お待ちしております。