6.24.2013

第72回

叙述態研(きむすぽ会)のみなさま

梅雨空が続く毎日、皆さまいかがお過ごしでしょうか。さて、7月きむすぽのお知らせをお送りいたします。皆さまの参加を心よりお待ちしております。なお、個人発表、著者セッションの企画は随時受け付けておりますので、運営まで気軽にご相談ください。

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第72回叙述態研  日時:7月5日(金)18時から  場所:国立オリンピック記念青少年総合センター センター棟502号室  (小田急線参宮橋駅下車 徒歩約7分
 <http://nyc.niye.go.jp/facilities/d7.html>)
  

【著者セッション】  


神子島健『戦場へ征く、戦場から還る――火野葦平、石川達三、榊山潤の描いた兵士たち』(新曜社、2012年)  

書評者:相川拓也(東京大学大学院)、野上元(筑波大学)  
司会:村上克尚


【企画趣旨】今回の著者セッションでは、神子島健さん(東京大学助教)の『戦場へ征く、戦場から還る――火野葦平、石川達三、榊山潤の描いた兵士たち』を取り上げます。本書は、火野葦平、石川達三、榊山潤という三人の作家の小説に社会学的な見地からアプローチし、出征や帰還、復員というプロセスに伴う、軍隊の規範、習慣と軍隊外のそれとのあいだの葛藤や揺らぎについて考察した重厚な著作です。本書の「序章」がイラク戦争のインタビューで始まることからも明らかなように、著者の問題意識は、「戦後」という自動化した空間の中で、戦争を「遠い世界のごときもの」として感じ(させられ)てしまう「今・ここ」の問い直しに端を発しています。その上で、著者の前に、研究対象として、小説作品が浮上してきたのは重要ではないかと思います。「結論」では、小説からは、「それぞれの作者の戦争に対するスタンスや意図には収まりきらない戦場の様相や、帰還兵、復員兵が帰国後に持ち込む戦場の痕跡や、それを受け容れる側の人々の思い」を読み取ることができる、と述べられています。戦場を決して単純化することなく、複層的な諸相に注目しながら、自分なりに引き受け直していくこと。このような著者の姿勢に敬意を払いつつ、さらに深く、戦場の複層性を掘り起こしていくきっかけが、セッションの議論を通じて見えてくればと思います。
今回は、お二人の方にコメンテーターをお願いしています。一人目は、東京大学大学院博士課程の相川拓也さんです。相川さんは、昨年八月にもコメンテーターを務めてくださいました。一九三〇~四〇年代前半の植民地都市・京城に注目しつつ、文学表現を通じて、当時の社会や人々の経験を探ることを研究テーマとなさっています。最近のご論文には、「同化の夢語り――蔡萬植「痴叔」のアイロニー」(『言語情報科学 11号』、2013年)があります。二人目は、筑波大学の野上元さんです。ご専門は歴史社会学、社会情報学で、ご著書に『戦争体験の社会学――「兵士」という文体』(弘文堂、2006年)などがあります。現在は、戦争社会学研究会の中心メンバーとしてもご活躍されています。お二人のコメントと神子島さんの応答の後、全体での討論に移れればと思っています。