6.02.2015

第85回


叙述態研(きむすぽ)の皆さま

 

この5月はずいぶん蒸し暑い日が続きましたが、

皆さまお変わりなくお過ごしでしょうか。

 

6月きむすぽのご案内を差し上げます。

どうぞふるってご参集ください。

 

日時:65日(金)18時から
場所:国立オリンピック記念青少年総合センター センター棟510

【著者セッション】

木村朗子『女たちの平安宮廷--「栄花物語」によむ権力と性--』(講談社、20153月)
コメンテーター:本橋裕美

 

***

内容紹介(講談社BOOK倶楽部より)

 

本書は、平安時代の摂関政治がどのように権力を生み出していったか、そのしくみについて女たちの後宮世界からみていくものです。
平安時代の宮廷サロンが生み出した文学作品に、「歴史物語」とよばれるジャンルがあります。男たちが漢文で記す「正史」にたいして、女たちの使う仮名であらわしたものです。できごとを羅列する無味乾燥な「記録」にたいして、できごとを活き活きと語る「物語」です。
平安宮廷の表舞台は摂関政治に代表される男の世界ですが、周知のようにその根底を支えているのは男と女の性の営み、天皇の閨房にありました。摂政関白という地位は、天皇の外祖父が後見役になることで得られるものですから、大臣たちは次々と娘を天皇に嫁入りさせ、親族関係を築くことに必死でした。
そうした要請から、摂関政治は結果として一夫多妻婚を必然としました。後宮に集う女たちは、天皇の寵愛を得るために、そして天皇の子、とりわけ次代の天皇となる第一皇子を身ごもるために競いあいました。
天皇の後見と称して、その権限を乗っ取るようにして発揮する最大の権力が、天皇と女たちの情事に賭けられていたというのは、ずいぶんと滑稽な話ですが、「歴史」はそういうことをあからさまにしたりはしません。あくまで男同士の権力闘争として書くわけで、むしろその本質であるはずの、いくつものサロンの抗争や女たちの闘争は「物語」にこそ明らかになるのです。
その恰好の例が『栄花物語』です。作者は歴史的事実をあえて無視したり操作することで、女であること・生むこと・母となることの連なりに走る裂け目こそが、男たちの世界をつくってはやがて掘り崩し、そうした変化が新しい権力構造を生みだしていくことをはからずも明らかにします。

著者紹介:

木村朗子(きむら・さえこ)
1968
年横浜市生まれ。東京大学大学院総合文化研究科言語情報科学専攻博士課程修了。博士(学術)。現在、津田塾大学教授。専門は、言語態分析、日本古典文学、日本文化研究、女性学。著書に『乳房はだれのものか日本中世物語にみる性と権力』(新曜社 、女性史学賞受賞)、『恋する物語のホモセクシュアリティ宮廷社会と権力』『震災後文学論あたらしい日本文学のために』(ともに青土社)などがある。

0 件のコメント:

コメントを投稿